【個別記事①】タロットカードを用いたキャラ感想:天城一彩さん編
・本記事ではあんスタ本編で読み取れた天城一彩さんが司る風元素の大アルカナ愚者・魔術師・恋人・正義・星のストーリーの中での描かれ方、筆者が個人的に受けたキャラクターさんの印象を個人の主観に基づいた感想として纏めます
・当記事で参照している画像はアーサーウェイト版(著作権切れ)のタロットです
目次
①大アルカナ0・愚者
愚者(描かれているのは薔薇・危なっかしい少年)
・愚者は何者でもない存在でもない存在であると同時に何者にもなれる存在です
・生命を象徴する薔薇・崖から落ちそうな無垢で危なっかしい少年が描かれています
・この「愚者」がタロットの番号を通じて成長する過程が、人間の成長や幸福へ至る道筋を示しているというのが現在のタロットカードを用いた創作物でよく見られます(ペルソナシリーズ等)
・また愚者のカードは何にでもなれるカードとしてワイルド(=文化をひっくり返し変革を齎す英雄としてのトリックスター)の素質を秘めています
作中で「愚者」の象徴が読み取れる個所
★「Believe 4 liaves」歌詞全体:幸福に至る旅、Dream on stupieds(夢見ろ愚か者)
★「共鳴するツインビークス」の登場人物(四大元素の風というキーワードが共通している):風の天体=ふたご座の2winkさん、風の愚者=天城一彩さん、羽風薫さん
★「一彩という名前/漆塗りのように自らの考えを塗り替えていける存在」
★兄の天城燐音さんいわく「馬鹿」=「愚者」
★「kiss of life」自分の意志で変えていく力
・大アルカナ「愚者」はワイルドカード・トランプでいう所のジョーカーと似た性質を持つとされます。十条要さん(ジョーカー)に繋がるキーワードでもあります(ALKALOIDはこれから十条要さんとなにか関わるのかもしれませんね…)
②大アルカナ1・魔術師
魔術師(赤薔薇・白百合・仏・剣♠・棍棒♣・杯♡・星マークの金貨♢)
・ウェイト版タロットではトランプのスートである剣(♠)・棍棒(♣)・杯(♡)・金貨(♢)を自在に用いながら奇跡を起こす魔術師の姿が描かれます
・真ん中の直立した述師は仏であるという説があります
・描かれている薔薇は生命と情熱・愛などの象徴
・もう一つ描かれている白百合は純潔の象徴であるとともに西洋では葬式の時に備えられる死の象徴です
・赤い薔薇と白百合で生と死の二面性を表すともされます
作中で「魔術師」の象徴が読み取れる個所
★「スカウト・ホワイトリリー」・「スカウト・フェアなワルツ」でみられるモチーフ
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フェアなワルツ(赤薔薇・♠=剣≒短剣)
③大アルカナ6・恋人
・まだ作中ではあまり読み取れないのですが、モラトリアムからの脱却や旅立ち・選択を示すアルカナです
・楽園を脱出しお互いを選ぶアダムとイヴ・愛の狂気を中和する大天使ラファエルの姿が描かれます
・知恵の実を差し出す蛇の姿も見られます(七種茨君に接触を禁じられている一彩君)
作中で「恋人」の象徴が読み取れる個所
★「翼モラトリアム」 不確定な未来からの旅立ち・選択
④大アルカナ8or11・正義(メインスト第1部でのメインテーマっぽい気がするアルカナ)
・陰陽という両極端の間に立ち「中道」や「調停」「善の変容」を示すアルカナです
・ALKALOIDがメインストーリー第一部で取った中立の立ち位置に通じるものがありそうです
・トート版タロットではJUSTICEをADJUSTMENT(調停)に変更しています
・このアルカナをズ!!のリードユニットのリーダーである天城一彩さんに宛がったのがズ!!の独自性だと筆者は思いました
・皇帝天祥院英智さんがかつて五奇人討伐など、人間の感情と感情を煽って利用するある種暴力的な革命手法を用いてしまった事へのまたひとつのアンサーがこのアルカナなのかもしれません
・人々の人権を守るために法規を重視するという姿勢は戦国時代や革命時代に起きた動乱(フランス革命後の争乱等)を取り扱った創作物の終焉描写にもよく見られます
・感情の獣になってしまった人・獣にならざる負えなかった人の調停に入る事ができる中道・法・正義・善を変容させる概念は神という名の獣(ギリシャ神話の神様等)から勝ち取った人間の英知です
・中世における自然災害は人という感情の獣と感情の獣同士の争いを意味します
・過熱した感情で人が互いを縛りあい攻撃し合い、個人の主体性を失いつつある問題に直面した時、救援・仲裁に入り個人が個人の姿を取り戻せるような手助けをします
・あんさんぶるスターズは円環の物語なのですが、円環が円環故に起きる困難を癒す薬、という名の調停アプローチも新しいなと思いました
作中で「正義」の象徴が読み取れる個所
★「メインストーリー第一部」
・自然災害(人という獣と獣の感情同士の争い)の間に立ち入る救助をする姿勢
★「トランプ in underground」(善性の変容・信義・理性)
・皇帝(大アルカナ4)の異名を持つ天祥院英智君との関わりが再度読み取れます
・皇帝と正義はともにタロットで「理性」を象徴しますが、この2枚では「理性」の読解が異なります
・皇帝の理性は父性・威厳・安定・超えられるべき壁としての理性として読まれますが、正義の理性は皇帝から与えられた物をどのように成すかという善への変容の理性です 人を重視するからこそ善は変容します
・またこちらのストでは大アルカナ剛毅(大アルカナ8or11)を司る礼瀬マヨイさんの理性も読み取れます
・剛毅が象徴する理性は自分の中の恐れを克服する理性です
・マヨイさんから一彩さんに、過去自らの恐れからリーダーを押し付けてしまった事への後悔が語られています
・このストーリーの最後には風早巽さんが天祥院英智さんの今後の動向を気にする様子がフラグ?として描写されています。今後も何かあるのか?
⑤大アルカナ17・星
・かすかな光、新しいなにかは常に生まれ続けるという希望・再生を示すアルカナです
・描かれる8つの星から影響を受け、自己の内面に自分として取り入れるといった性質を持ちます
作中で「星」の象徴が読み取れる個所
★「メインストーリー第一部」
・胸を張って答えるよ、僕は天城一彩だ
・一部最終盤で、最終的に天城一彩さんは「我思う、ゆえに我あり」という中世個人哲学のある種の到達点に至ったのかな、と筆者は思いました
どのような思想信条を持っていようが、その時に何を表現しようが、何を迷おうが、「その人はその人のあるがまま、思いのまま」を表現する自由があるという考え方です
(この精神性の自立や善性の変容の性質は大アルカナ正義内にも描写されているので迷いましたが、今回は「星」に記載します)
★「VERMILLION」「トランプ in the underground」「Artistic Partisan」「フェザータッチ」「幻影飛行船」「サテライト(人工衛星)」
・我想う・故に我あり
・自分自身である事を自分自身に誓う精神の自立
・他の星との対等な目線での交流・本人の内面世界や精神の確かな成長が読み取れます
・この「他者との交流から成長・再生する」という性質はユング心理学の肝である分析心理学の考え方と似ているため、「星」はユング心理学の概念を端的に表すアルカナであるとする解釈があります
★「SHUFFLE×Easter to you」
・イースターは復活祭。個人的な人間性の「再生」は大アルカナ星が象徴する性質です
筆者の読書感想文・(メイン一部時点での天城一彩さんのイメージ)
・郷に入っては郷に従えという治外法権概念・自力救済概念を異国であるESで実践してるようなので外付けの「正しさ」に拘っている機構のように見える(自分が掟に徹さない=他人の人権侵害であるという中世臓器社会の自力救済の掟に基づいた考え)
・自我を出す事が他人への加害であった中世時代ならではの考え方です
・その法に徹するような姿勢がマヨイさんや巽さんに洗脳・何か怖い・自分を投げ売って何でも信じちゃう危なっかしい子として見られる
・最終盤まで他人の言動を模倣しているような姿が見られ己を置き去りにしがち・故に何考えてるか分かりずらい
・時々視点漏れ発言をする
・1.5部で謝罪したのも自力救済的な考え方の発露かなと思います、多分頭の中に連座とかが思い浮かんだのでは?
・藍良さんに一彩個人の願いはなんだと問われるまで自分の事を何も考えられてなさそう
・正しいに従っていれば、(自分以外の)人間が安寧に過ごせるはずであった、という臓器生贄精神が垣間見えます
・メインスト1部で構想がどこまであったのか分かりませんが、「追憶:オブリガート」の風早巽さんと動きが酷似している印象を受けました
・天城燐音さんの行動を解説出来たのが風早巽さんであるという構図も筆者は興味深いと思いました
・教会に関係のある風早巽さんはあの中で唯一、中世の自力救済概念や怨恨という感情に馴染みのある人だったんだと思います
・風早巽さんは物語のメタ進行上の都合で一彩さんや燐音さんの境遇が想像できたのではなく、風早さん本人も中世の概念に馴染みが深いので、それ故に一彩さんに的確なアドバイスがでたのではないかと思います(中世の教会も中世の武家風の里もだいたい似たような構造ですので想像しやすかったのかもしれません)
・天城一彩さんの意識改革に関しての筆者的MVPは風早巽さんです。あの関わり方は巽さんじゃないと出来なかったと思います
・円環の物語・縁の物語としてとても上手いな、と思いました
天城一彩さんの姿は…
・まるで頭脳を持った「他人」に血液を送るために存在する「心臓」
・アルカロイドが直面する他人を生かすための奴隷、中世時代の人間の「臓器性」を象徴するような存在なのかな、という印象を受けました
・幸福の王子に血液を送るためのツバメのようなもの(ただし本人が死ぬと王子の脳に血液を送る存在がいなくなるので王子ともども壊れます)(ツバメは幸福の王子の爆弾なんです)
・「Kiss of life」 心臓・人工呼吸
・「Distorted Heart」 臓器上がりの少年達が意味もよく分からないまま歌う歪な恋の歌……などにも「心臓」「臓器」というキーワードが見られます
・中世臓器社会で存在を認められていなかった「概念次男坊」に焦点を当てたのが天城一彩さんの独自性のひとつだと筆者は思いました
・自分に個人としての人権があるのかも分かってなさそう、というのが作中で示されたメイン一部時点での一彩さんの難しさかなと思います
・一彩さんの独自性のひとつに、自分自身に個人的な人権があるか分かっていない状態で登場しているという点があると思います
・これぞ中世臓器社会の悪い一面です(藍良には僕が必要?辺りが顕著)
・臓器社会出身の概念次男坊故、個体としての自我がまだあまり芽生えていないのでは?という印象を持ちました
…
・一彩さんは燐音さんやアイドル達と向き合うことで己の中の気持ちを探求し、その途中で燐音さんの本音と向き合うことになります
・概念的な武家の次男である一彩さんは燐音さんの罪を引っ被って死ぬある種の生贄であり、君主と民の仲立ちをする鎹のような存在であり、臣民の要請を受けて燐音さんやES帝国に反旗をを翻すクーデター要員の可能性を秘めた第二王子、ような非常に難しいポジションであることが想像できます
・(風の大アルカナ愚者は時々ワイルドカードとして創作物に登場します。なんにでもなれるという性質を持ちます)
・争い合うのが人の性というような考えを表現した燐音さんに対して、言葉や理性や英知によって争いを回避できるのも人、というような考えを示して終了します
・ですがそういう一見は腹に貯まらない風の信念に命を懸けてしまうような姿勢が燐音さん曰く馬鹿=愚者で危なっかしいのかもな、と思いました
(お星さまになる、というのがそういう意味だったら悲しいですが…)
(大アルカナ「星」に描かれる女性は神ゼウスに拉致された美少年ガニメデスの女性のの姿であるとされます)
・自由意志を守るために善を変容させていく中道の姿勢もALKALOIDのひとつの「らしさ」なんだと思いました
筆者の個人的な覚書と感想
・燐音さんを止めようとしていたの、一彩さんから見た燐音さんは天城村で培った特権階級意識をESで振ろうとしているように見えたから、では?思いました
・燐音さんが自分の命をベットしながら自分の要求を通すようなギャンブルを続け、他人と向き合うことを放棄し続けた場合、報復が来てそもそもの人命が危うくなる可能性が見えていたような印象を持ちました
・特権階級意識を臣民と王の相互利用関係の閾値を超えて振るうのは危険です(世界史の王朝が暗愚になり民衆蜂起で倒れる時と同じイメージ)
・燐音さんは自分をベットして強制文化交流や革命をやってるような一面もあるように見受けられましたが、その行動は限度を超えたり考えの受け取り手がいないと文化侵略行為ギリギリなので相当危ういよな、と思いました
・強すぎる感情の力は人という獣の力=自然災害です(故に燐音さんが起こした自然災害で傷ついた人が大勢おり、文化を侵略されて嘆く人も当然いる、それは燐音さんがアイドル辞めて癒える種類のものかというと…という命題が作中で残っているような形で第一部は終わったような気がしました。ここからどうなるのでしょうか?)
(七種茨さんや天祥院英智さんといいあんスタは攻めたシナリオ書きますよね)
・これアイドル物じゃなくて歴史伝奇ファンタジーなんじゃ…
・その一方燐音さんの中にある一彩の兄や家族でありたいという思いは燐音さんが一歩踏みとどまる事の出来た理性の命綱のようなものとして機能していそうだな、と思いました(天城燐音さんに椎名ニキさん・桜河こはくさん・HiMERUさん・ファンの人など命綱になってくれる人が居てくれて本当に良かったな、と思います)
・天城一彩君が持ってる特別なキーワードのひとつに♠の剣の「分節化」や「切り分け」があります
・心理学でいう「分節化」は理性もって相手の「個人性」に向き合う事です
・彼は感情の獣になってしまった天城燐音くんの個人性と向き合うのと同時に自分自身を天城村の臓器から一度「切り分け」、兄弟はそれぞれ掛け替えのない個々の「星=アイドル」になりました、という所で第一部が終わったんだと思います
・天城一彩くん、象徴で読み解かないと滅茶苦茶難しいので調べ物が捗りました
・自力救済・臓器社会という概念は第2回の記事で紹介していますので、宜しければご参照ください